旧コラム

第5回 届いた商品が壊れていたときの返送料はどうなる?

財団法人日本消費者協会 消費生活コンサルタント 広重美希  

ご相談内容

WEBサイトを見ていたら、中古のカメラが販売されていました。以前から憧れていた海外メーカーのものだったので少し迷いましたが、購入することにしました。「前払い」が条件だったので、申し込んでから代金を振り込み、3日後にカメラが届きました。 早速、撮影をしようとしたところ、シャッターがおりませんでした。最初から壊れていたことを告げ、販売会社に「返したい」と伝えたところ、返送料は自分の負担だと言われてしまいました。 返品については契約条件の中に「商品到着後8日以内なら、返品を受け付けます。この場合の送料はお客様の負担になります」と書かれていました。ですので、この条件でよければ、返品を受け付けるというのです。 最初から壊れていたのだから自分には落ち度はないと思うのですが、返送料は自分が払わなければならないでしょうか。
(福岡県在住・30代男性・E男さん)

コンサルタントの解説

買った商品が「壊れていた」ときの考え方をご紹介しましょう。これはネットショッピングだけではなく、店頭で買った品を後で届けてもらう場合にも通じる考え方です。 購入するときに消費者が通常の注意を払っても気づかなかった不具合のことを「瑕疵(かし)」といいます。単なる不具合というだけではなく、この不具合によって契約の目的が果たせないときには、瑕疵に気づいて1年以内の場合、販売店には契約解除の責任が生じます。この責任のことを瑕疵担保責任(民法570条)とよびます。この責任をとるのは、ショップ(売主)です。 カメラは写真を撮影することが目的ですので「シャッターがおりない」というのは、契約の目的を果た さないことになります。そのため、瑕疵担保責任が生じ、ショップも消費者も契約前の状態に戻さなければならず、ショップは送料も負担して、このカメラを引き取らなければなりません。 商品に何の問題もない場合の返品とは異なりますので、契約条件上の消費者が送料を負担して返品するのとは扱いが変わります。

消費者の皆様へ

中古品を購入する場合、販売店に古物商の登録があるかどうかを管轄する公安委員会に確認したり、サイト上にも免許の記載があるか確認しましょう。 中古品の場合には、返品などの契約条件について、購入前に特に慎重に確認しましょう。 商品が到着したら、動作も含めて、なるべく早く中身を確認しましょう。 ネットショッピングを含めて通信販売では、「広告で見たものと実物のイメージが違う」ということが起こりがちです。このようなときには返品特約の範囲内で、返品できる環境を確保することが大切です。 今回のケースのように最初から壊れていて契約の目的を果たさないようなときには、この返品特約とは別に「瑕疵担保責任」が売主に課されています。送料もショップの負担で返品できるはずと交渉しましょう。

ネットショップ事業者の皆様へ

中古品を商売として売買する場合は、地域の警察署(公安委員会)の「古物商の許可」が必要です。 個人のネットオークション等であっても、仕入れたものを継続的に売る場合などは、事業者として許可が必要となります。 古物商の免許取得が済んだら、サイトに許可番号(※)を記載し、消費者に分かりやすい表記をしましょう。
※(例)「東京都公安委員会第○○○○○○○○○○○○号」
売主には「瑕疵担保責任」がありますので、今回のような場合には契約解除に応じるだけでなく、返品特約と違って送料も負担しなければならなくなります。商品を送る前に壊れていないかどうかは確認すべきでしょう。 財団法人日本消費者協会 消費生活コンサルタント 広重美希

財団法人日本消費者協会

消費者のための情報提供や啓発などを行ったり、消費者の声を生産者や流通業者、行政、業界団体等に伝える公益法人です。かしこい消費者になるための「消費者力検定」を実施したり、生活に関する苦情、相談も受け付けています。

消費者相談室

電話:03-5282-5319
受付時間:月曜~金曜 10:00~12:00/13:00~15:00(土日祝日を除く)

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