旧コラム

第4回 注文した証拠が残っていない・・・

財団法人日本消費者協会 消費生活コンサルタント 広重美希

ご相談内容

インターネットショッピングで1万円で売り出されていたパソコンを注文しました。このパソコンは同等の機種を量販店で買うと10倍以上の値段でしたが、このショップでは1万円で売り出されていました。 なぜこれほど安いのかわからなかったのですが、1万円ならぜひ買いたいと思って、申し込みました。 お金はまだ払っていないのですが、それ以来パソコンは届きません。それどころかメールを送っても、返信すらありません。どうしたらいいでしょうか。
(大阪府在住・30代男性・D太さん)

コンサルタントの解説

この相談を受けて相談室では、メールで注文したときの注文書や契約書、契約条件などを保存してあるかどうか尋ねました。それらの内容を印刷していないだけでなく、保存もされていないことがわかりました。それでは、注文をしたメールが送信記録としては保存してあるか尋ねましたが、こちらも保存はされていないということでした。つまり、この注文をしたといういっさいの証拠が残っていなかったというわけです。
これでは、相談者が商品を本当に注文したのかどうかはわかりません。消費者相談の中では「言った言わない」といった誤解や勘違いが、事業者と消費者の双方に起きがちです。そのような場合、事実をだれが証明するのでしょうか。自分が相談として申し出た内容が事実であると証明するのは、相談者自身です。「契約をした」ということを主張するのであれば、それは相談者が証拠の書類などを示すことが必要です。
結果的にこのケースでは、「契約した」という立証を相談者ができなかったために、消費者相談として事業者にあっ旋することはできませんでした。その結果、相談者はお金も払わず1万円でパソコンを手に入れることもできませんでした。
以前、あるネットショップが誤った広告を出したことで話題になりました。本来パソコン代を10万円と記載すべきところを、1万円と表示して誤りに気づかないままネット上に流してしまいました。これを知った消費者から、同様の相談が当協会相談室に多くよせられた時期がありました。消費者に対しては「事業者の錯誤」であり、したがって契約としては無効であることを説明したケースもありました。

消費者の皆様へ

契約条件を見て、曖昧な点があれば、直接ショップに確認しましょう。
今回のような「事業者の錯誤」による場合、契約は「無効」として、始めから無かったことになる場合もありうることです。注文したメールや、ショップからの「受注しました」メールなどは保存しておきましょう。
最近、迷惑メールと間違って判定され、メールが届かないことが多くなっています。注文したのに返事が全くこない場合などは、電話などでショップに問い合わせてみましょう。

ネットショップ事業者の皆様へ

「通信販売」は特定商取引に関する法律で規制を受け、広告記載事項が定められています。正しい記載の内容であることをよく確認しましょう。
「錯誤無効」という上記の主張が通りにくいケースも考えられますので、十分注意が必要でしょう。
お客様の迷惑メールフィルタの設定でショップからの受注メールが届かない、などのトラブルが増えています。メール以外の問い合わせ方法(電話など)も分かりやすく表示しておくことも大切です。
財団法人日本消費者協会 消費生活コンサルタント 広重美希

財団法人日本消費者協会

消費者のための情報提供や啓発などを行ったり、消費者の声を生産者や流通業者、行政、業界団体等に伝える公益法人です。かしこい消費者になるための「消費者力検定」を実施したり、生活に関する苦情、相談も受け付けています。

消費者相談室

電話:03-5282-5319
受付時間:月曜~金曜 10:00~12:00/13:00~15:00(土日祝日を除く)

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